中小企業版SBTの基準年はどう決める? 申請前に確認すべきポイントを解説
- 外部認証を取得したい
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2026/06/08
中小企業版SBT認証を取得する中小企業が年々増加していることを受け、自社でも認証取得を検討している中小企業は多いのではないでしょうか。知らないうちに同業他社がひと足先に認証を取得していた、取引先からの脱炭素要請に備えたい、など認証取得に動く理由は様々です。
この記事では、最初に躓きやすい「中小企業版SBTの基準年を設定する」前に確認しておきたい実務上のポイントを整理しています。
目次
中小企業版SBTとは?まず押さえたい基本
SBT(Science Based Targets)とは、パリ協定が求める水準と整合した温室効果ガス削減目標のことです。中小企業版SBTは、中小企業が比較的取り組みやすい形で科学的根拠に基づく削減目標を設定できるように用意されたルートです。
中小企業版SBTの近時点目標では、主にScope1・Scope2の絶対削減目標を設定します。Scope3については近時点目標の認定対象として必須ではありませんが、測定と削減に取り組むことが求められます。
取引先からの調査やサプライチェーン上の要請に対応するうえでも、SBT認定は「削減目標を社外向けに説明する」ための一つの手段として、認定を取得する企業は年々増加しています。
中小企業版SBTは「基準年」の決め方で目標値が変わります
中小企業版SBT認定の取得を検討するとき、最初に躓きやすいのが「基準年をどの年にするか」という点です。
SBTでは、基準年のCO2排出量を出発点として、目標年までにどの程度削減するかを設定します。そのため、同じ会社であっても、どの年を基準年にするかによって、目標年に目指すCO2排出量は変わります。
たとえば、設備の稼働状況や生産量が多かった年を基準年にした場合と、すでに省エネ対策を進めた後の年を基準年にした場合では、基準年の排出量そのものが異なります。
基準年の排出量が変われば、そこから算出される削減目標量も変わります。そのため、「とりあえず直近年でよい」と決めてしまうと、後から削減計画との整合性を説明しづらくなります。
基準年は自由に都合よく選べるものではありません。SBTiのルールに沿い、算定根拠があり、将来の進捗管理にも使える年を選ぶ必要があります。
ここからは、中小製造業が中小企業版SBTを検討する際に押さえておきたい、基準年設定の考え方と注意点を解説します。
基準年とは、CO2削減目標を計算する出発点です
基準年とは、削減目標を設定する際の出発点となる年です。
たとえば、基準年のScope1・Scope2排出量が1,000t-CO2e(CO2換算)だった場合、この「1,000t-CO2e」が削減目標を計算する基準になります。つまり、目標年の排出量は、基準年の排出量からどれだけ削減するかによって決まります。
ここで重要なのは、基準年は単なる申請書上の数字ではなく、今後の削減計画を管理するための基準にもなるということです。
基準年の排出量が不正確であったり、通常の操業状態を反映していなかったりすると、削減目標の前提が曖昧になり、目標設定後の進捗確認や社内外への説明が難しくなってしまうのです。
自社に適した基準年の設定でお悩みなら
中小企業版SBTでは、基準年のCO2排出量をもとに削減目標を設定します。
どの年を基準年にするかによって、必要な排出量データの整理や、2030年に向けた削減計画の考え方も変わります。
ESJでは、CO2排出量の算定から基準年の考え方、SBT申請に向けた目標設定まで、
企業の状況に合わせてサポートしています。
2030年の目標CO2排出量は、基準年の選び方でどう変わるのか
以前の中小企業版SBTでは2030年を目標年とする説明が多く見られましたが、2026年現在のSBTi Servicesが提供するオンライン申請システム(Validation Portal)では、近時点目標年は一定範囲内で選択可能となっています。
とはいえ、社内の脱炭素計画や取引先への説明では、2030年を一つの節目として検討する企業も多いと考えられます。
以下は、2030年を一つの目標年として考えた場合のイメージです。実際の申請では、SBTiの最新ルール、Validation Portal上の選択肢、対象スコープ、算定方法に従って確認する必要があります。
| 基準年の例 | 基準年排出量の例 | 2030年までの削減率イメージ | 2030年目標排出量のイメージ |
|---|---|---|---|
| 2020年 | 1,200t-CO2e | 約42.0%削減 | 約696t-CO2e |
| 2022年 | 1,050t-CO2e | 約33.6%削減 | 約697t-CO2e |
| 2024年 | 1,000t-CO2e | 約25.2%削減 | 約748t-CO2e |
※上記は「年4.2%削減」という考え方を単純化した説明例です。実際の認定可否や削減率は、申請時点のSBTi基準、選択する目標年、対象範囲などにより確認が必要です。
この表から分かるように、目標年に求められるCO2排出量は、基準年から目標年までの期間だけでなく、基準年の排出量そのものにも左右されます。
2020年を基準年にすると削減期間が長いため削減率は大きくなりますが、基準年排出量が1,200t-CO2eと大きいため、2030年の目標排出量は約696t-CO2eとなります。
一方、2022年は削減率が約33.6%と2020年より小さいものの、基準年排出量が1,050t-CO2eのため、2030年目標排出量は約697t-CO2eと、2020年基準の場合と近い水準になります。
つまり、基準年を検討する際は、「何年を基準にするか」だけでなく、「その年の排出量がどの程度だったか」もあわせて確認することが重要です。そのうえで、単に排出量の大小だけで判断するのではなく、基準年として使えるデータか、今後の削減計画とつながる年かを確認する必要があります。
具体的には、次のような点を整理しておくとよいでしょう。
- その年の排出量が正確に算定できるか
- 通常操業を反映しているか
- すでに実施した省エネ対策をどう扱うか
- 今後の削減計画と説明しやすいか
これらを総合的に見ることで、申請時だけでなく、認定取得後の進捗管理にも使いやすい基準年を検討しやすくなります。
基準年を決める前に確認したい5つのポイント
これらを踏まえて、基準年を選ぶ前に確認すべきポイントを5つに絞って確認します。
1. 排出量データの根拠が残っているか
電気、燃料、蒸気、ガスなどの使用量データが揃っているかを確認します。
請求書、検針データ、エネルギー管理表、設備別の使用量データなど、後から説明できる根拠が重要です。
2. 通常の操業状態を反映しているか
一時的な操業停止、増産、工場移転、設備の大幅変更などがあった年は、排出量が通常年と大きく異なる可能性があります。
その年を基準年にする場合は、なぜその年を選ぶのかを説明できる状態にしておく必要があります。
3. すでに実施した省エネ対策との関係を整理できるか
LED化、高効率空調への更新、コンプレッサ更新、ボイラ更新、運用改善などをすでに実施している場合、基準年の選び方によって「削減済みの効果」が目標にどう反映されるかが変わります。
過去の取り組みを評価したいのか、今後の取り組みを中心に見せたいのかも整理が必要です。
4. 目標達成に向けた削減余地があるか
基準年と目標年の数字だけを決めても、実際に削減できる見込みがなければ、進捗管理が難しくなります。
- 設備ごとのエネルギー使用状況
- 老朽設備の更新時期
- 運用改善の余地
- 補助金活用の可能性
などを確認し、現実的な削減ロードマップにつなげることが大切です。
5. 社内外に説明しやすいか
SBTは認定取得で終わるものではありません。
取引先への回答、社内の設備投資判断、年次の進捗確認に使うことを考えると、「なぜその年を基準年にしたのか」を経営層や現場担当者にも説明できる状態が望ましいです。
中小製造業では「算定」と「削減計画」を分けずに考えることが重要です
中小企業版SBTの申請準備では、まずScope1・Scope2の排出量を算定します。
しかし、算定だけで終わってしまうと、「目標は設定できたが、具体的に何から削減すればよいか分からない」という状態になりがちです。
特に製造業では、生産設備、空調、コンプレッサ、ボイラ、乾燥炉、冷却設備、照明など、エネルギー使用の要因が複数に分かれます。
電気使用量の合計だけを見ても、どの設備に削減余地があるのか、どの対策を優先すべきなのか、判断が難しい場合があります。
そのため、SBT取得を検討する段階から、基準年の排出量算定とあわせて、設備別・工程別のエネルギー使用状況を整理しておくことが重要です。
削減目標と現場の改善策がつながることで、SBTを「認定取得のための目標」ではなく、「コスト削減とCO2削減を進めるための実行計画」として活用し、社内へ浸透しやすくなります。
ESJが支援できること:基準年設定から削減の実行まで
基準年設定では、単に「どの年を選ぶか」だけでなく、排出量データの整備、Scope1・Scope2の算定、削減目標との整合、今後の削減施策の見通しを含めて確認することが重要です。
ESJでは、エネルギー診断によって得たデータを分析し、工程や設備ごとのCO2排出量算定と削減余地を洗い出し、課題を抽出します。
これらのデータから、削減に向けた運用改善提案や補助金活用による設備更新の有無など、SBT認定取得後の削減を見据えた支援も行っています。
また、多くご相談をいただく「複数のグループ企業や海外拠点の申請」についても支援した実績があり、安心してお任せいただける体制が整っています。
申請範囲をどこまで含めるのか?については、こちらの記事がおすすめです。
中小企業がSBT認定取得を検討する場合、まずは自社の排出量と削減余地を把握することが、無理のない第一歩となります。
基準年をいつにすべきか、目標達成に向けてどの設備・工程から改善すべきか、
海外拠点やグループ会社の申請範囲はどこまで含めるのか、
などを確認したい方は、まずはESJにご相談ください。
まとめ:基準年は「申請のための数字」ではなく、削減計画の土台です
中小企業版SBTでは、基準年の設定によって目標年のCO2排出量が変わります。だからこそ、基準年は任意に選べるから簡単、というわけではありません。
正確な排出量データがあり、通常操業を反映し、今後の削減計画と整合する年を選ぶことが重要です。
SBT認定は、取引先や社会に対して自社の脱炭素への姿勢を示す手段であると同時に、省エネやエネルギーコスト削減を進めるきっかけにもなります。
目標設定の段階から、現場のエネルギー使用状況と削減余地を把握し、実行につながる計画として活用していきましょう。
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