2026年度省エネ補助金の採択案件に学ぶ、製造業の設備更新|来年度の計画に生かす4つの視点
- コストを削減したい
- 設備更新をしたい
- 補助金を活用したい
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2026/10/19
「来年度、老朽化した生産設備を更新したい」
「省エネ補助金を活用したいが、どのような設備更新計画を立てればよいのか分からない」
このような製造業にとって参考になるのが、すでに公表されている省エネ補助金の交付決定案件です。
採択案件を見ると、どのような設備が更新されているかだけでなく、主設備と周辺設備をどう組み合わせ、設備更新による省エネ効果をどの範囲で捉えようとしているかが分かります。
この記事では、令和7年度補正予算「省エネ・非化石転換補助金」の2026年版公表資料のうち、工場・事業場型の交付決定案件をもとに、製造業が設備更新計画を考える際のポイントを4つに整理します。
来年度の設備投資予算を検討している企業や、更新設備の候補を比較している企業は、自社の計画に当てはめながらご覧ください。
まず確認したい、省エネ補助金の採択案件から分かること
公表されている交付決定案件には、事業者名、事業内容、導入設備、補助金額などが掲載されています。
例えば、次のような設備更新計画を確認できます。
- 射出成形機の高効率化
- レーザー加工機とコンプレッサーの更新
- 印刷機と空調設備の更新
- 誘導炉と関連設備の更新
- 破砕設備と搬送設備の更新
- 生産ライン全体の高効率化
- 排熱回収を含む設備更新
- エネルギー消費原単位の改善
1次公募の一覧には工場・事業場型171件、2次公募の一覧には同157件が掲載されています。
ただし、公表資料だけでは、更新前後の詳しい設備仕様、年間稼働時間、省エネ効果の計算過程、審査内容までは確認できません。
そのため採択案件は、「この設備なら採択される」という答えを探すものではなく、自社の設備更新をどのような範囲で計画するかを考える材料として活用することが大切です。
視点1:主設備を高効率な設備へ更新する
製造業の設備更新で最初に検討しやすいのは、現在使用している生産設備と、更新候補となる高効率設備を比較する方法です。
公表された交付決定案件には、油圧式射出成形機を高効率な射出成形機へ更新する計画や、既存の印刷機を高効率な印刷機へ更新する計画、金属加工で使用するレーザー加工機を更新する計画などがあります。
ただし、「古い設備を新しい省エネ型設備へ置き換える」という説明だけでは、更新による省エネ効果を十分に整理できないことがあります。自社の設備更新計画では、少なくとも次の情報を確認しておきましょう。
- 既設設備のメーカー、型式、能力
- 更新候補設備の仕様
- 更新する設備の台数
- 年間の稼働日数と稼働時間
- 現在の電気・燃料使用量
- 更新前後の生産量
- 製品構成や稼働条件の変化
- 更新によって見込まれるエネルギーコストの削減額
特に注意したいのは、設備更新に伴って生産能力や稼働時間が変わる場合です。定格消費電力だけを比較すると、実際の稼働条件を反映した省エネ効果にならないことがあります。
確認しておきたいポイント💡
更新する主設備について、更新前後を同条件で比較できるか。生産量や稼働時間が変わる場合、その変化を説明できるか。
視点2:主設備とコンプレッサーなどの周辺設備を一緒に考える
工場のエネルギー使用量は、製品を加工・製造する主設備だけで決まるものではありません。加工機を稼働させるためのコンプレッサー、工場内の空調・照明、冷却、集塵、搬送設備などもエネルギーを使用しています。
公表された交付決定案件には、次のような設備の組み合わせがあります。
- ファイバレーザー加工機とコンプレッサー
- レーザー加工機と空調設備
- レーザー加工機と制御機能付きLED照明
- 射出成形機と制御機能付きLED照明
- 印刷機と空調設備
- 誘導炉と砂再生設備などの関連設備
主設備だけでなく、その稼働や工場環境に関係する設備を併せて更新する計画が複数公表されています。
複数設備を同じ時期に更新する予定がある場合は、それぞれを個別に検討する前に、更新候補を一覧にしてみましょう。
ただし、設備を複数組み合わせること自体が申請上有利になるとは限りません。重要なのは、どの設備を一つの更新計画として捉え、どの範囲で省エネ効果を計算するかです。
確認しておきたいポイント💡
主設備の更新に伴い、コンプレッサー、空調、照明、冷却、集塵、搬送設備なども更新する予定があるか。
複数設備の更新を予定している企業様へ
主設備と周辺設備をまとめて検討できるかは、設備構成や申請タイプによって異なります。
「レーザー加工機とコンプレッサーを同時に更新したい」
「生産設備と空調を一緒に見直したい」
という段階でも、更新範囲と省エネ計算の考え方を整理できます。
視点3:設備単体ではなく、生産ライン全体を見直す
老朽化した設備を、更新前と同等の生産能力を持つ高効率設備へ置き換える計画に加え、生産ラインの構成そのものを見直して省エネを図る計画もあります。
砕石関連の交付決定案件には、破砕設備と搬送設備を更新する計画や、高効率な砕石プラントを導入してエネルギー消費原単位の改善を図る計画があります。鋳造工程では、造形、砂処理、集塵設備をまとめて高効率な設備へ更新する計画も公表されています。
こうした案件からは、個々の設備性能だけでなく、工程間のつながりやライン全体のエネルギー使用状況に目を向けるという検討方法が分かります。例えば、砕石プラントで破砕機を更新する場合でも、次の点を確認する余地があります。
- 破砕機の前後にある搬送設備
- 選別工程の能力と電力使用量
- 設備の待機時間と過剰運転
- 更新後の生産能力
- ライン全体の稼働時間
- 集塵設備やコンプレッサーなどの付帯設備
複数の工程を統合したり、設備配置や搬送方法を見直したりすることで、設備単体の更新とは異なる省エネ効果が生じる場合もあります。一方で、生産ライン全体やオーダーメイド設備を含む計画は、比較対象となる設備や省エネ効果の算定条件が複雑になりやすいため、設備仕様を確定する前の整理が重要です。
確認しておきたいポイント💡
更新予定の設備だけでなく、その前後の工程、搬送、冷却、集塵など、生産ライン全体で見直せる箇所があるか。
視点4:増産を予定しているなら、エネルギー消費原単位にも目を向ける
設備更新後に生産能力が上がる場合、工場全体のエネルギー使用量だけでは、設備の効率改善を捉えにくいことがあります。
その際に検討したいのが、生産量当たりのエネルギー消費量を示す「エネルギー消費原単位」です。
以下のような計画が公表されています。
- 印刷関連の計画には、インキローラー部分の改良によって原単位の改善を図るもの
- 砕石関連には、高効率な砕石プラントを導入して原単位の改善を図る
- 飲料製造では、飲料充填システムと、ボトル成形機、コンプレッサー、蒸気ボイラーを更新し、原単位の改善を図る
増産や生産品目の変更を予定している企業は、設備更新後に「何を、どれだけ生産するのか」を早めに整理しておきましょう。
- 現在の年間生産量
- 更新後に予定する生産
- 製品ごとの生産割合
- 設備の稼働時間
- 不良率や歩留まりの変化
- 更新前後で共通して使える生産量の指標
- 増産に伴って追加される工程や設備
ただし、経営管理上の原単位が改善することと、補助金の要件を満たすことは同じではありません。
どの指標を使用できるか、どのような計算が必要かは、申請タイプや公募要領に基づいて確認する必要があります。
確認しておきたいポイント💡
更新前後で生産量や製品構成が変わる場合、その変化を数値と資料で説明できるか。
採択案件から見える、設備更新計画の3つの傾向
公表された案件は、業種、設備、投資規模がそれぞれ異なります。そのため、特定の設備や更新方法が採択されやすいと一概に判断することはできません。一方、公表された事業内容からは、設備更新計画を検討する際の参考となる3つの傾向を確認できます。
1.設備更新と省エネ効果の関係が示されている
交付決定案件では、単に「老朽化したため更新する」のではなく、高効率設備への更新、排熱回収、電化、燃料転換などによって、どのような省エネルギー化を図るのかが記載されています。自社の計画でも、「どの設備を導入するか」だけでなく、更新によってエネルギー使用量やコストがどのように変わるのかを整理する必要があります。
2.主設備と周辺設備を組み合わせた計画がある
レーザー加工機とコンプレッサー、射出成形機と照明、印刷機と空調など、複数設備を組み合わせた計画が公表されています。複数設備を同じ時期に更新する場合は、個別の設備更新として見るだけでなく、工場または生産工程全体として整理できないかを検討する余地があります。
3.生産能力や工程全体を踏まえた計画がある
生産ラインの集約、排熱の再利用、工程設備の一体的な更新、原単位の改善を含む計画も確認できます。更新後に増産する場合や、生産工程そのものを変更する場合は、設備単体の性能だけでなく、生産条件を含めた省エネ効果の整理が必要となります。
これらは、個々の案件の採択理由を示すものではありませんが、設備の名称や価格のほかに、更新範囲、生産条件、省エネ効果まで一体的に考えるための参考とすることができます。
自社の設備更新計画を整理するチェックリスト
ここまで紹介した4つの視点は、どれか一つを選ぶものではなく、自社の設備更新計画に応じて組み合わせを検討します。来年度の設備更新を予定している企業は、まず以下の資料や情報を確認しておきましょう。
-
- 既設設備のメーカー、型式、能力、導入
- 更新候補設備の仕様書やカタログ
- 設備ごとの台数と稼働時間
- 電気、ガス、重油などの使用量を確認できる資料
- 更新前の生産量や処理量
- 更新後の生産量や製品構成の見込み
- 同じ時期に更新を予定している周辺設備
- 設備と工事の概算見積
- 設備導入に必要な期間
- 社内の予算決定時期
- 設備を導入したい時期
すべての情報がそろっていなくても構いません。まずは、更新したい設備、導入希望時期、概算予算、現在分かっている設備仕様を整理するところから始めます。
設備単位型と工場・事業場型、どちらで検討する?
更新範囲が見えてきたら、設備単位型と工場・事業場型のどちらを軸に検討するか、省エネ効果をどの範囲で計算するかを確認します。
SIIの2026年版特設サイトでは、省エネ・非化石転換補助金には「工場・事業場型」と「設備単位型」の2つの対象範囲があり、申請内容によって選べる補助対象設備が異なると説明されています。また、先進設備・システム、オーダーメイド型設備、指定設備、トップ性能設備なども示されています。
そのため、他社の採択案件と似ているというだけでは、次の点を判断できません。
- 自社の設備が補助対象になるか
- 複数設備を同じ計画に含められるか
- どの申請タイプが適しているか
- 工事費を含めて検討できるか
- どの範囲で省エネ効果を計算するか
- 増産や製品変更をどう反映するか
設備一覧だけを見て対象・対象外を決めるのではなく、自社の設備更新計画全体に合う申請タイプがあるかを確認することが重要です。
採択案件を見ても「自社の場合」が分からない理由
交付決定案件は、設備更新の方向性を考えるうえでの参考にはなりますが、案件一覧だけでは次のような条件までは分かりません。
- 更新前の設備仕様とエネルギー使用量
- 年間の稼働時間
- 更新後の生産量
- 省エネ効果の詳しい計算条件
- 補助対象経費の範囲
- 申請時に提出した根拠資料
- 個々の案件の審査内容や採択理由
特に、複数設備の同時更新、生産ライン全体の見直し、特注設備の導入、増産、製品構成や稼働時間の変更などを含む計画は、設備選定の段階から検討条件を整理しておくことが重要です。
相談前に申請タイプを決める必要はありません。
まずは、「自社の更新計画を、どの範囲と条件で省エネ事業として整理できるか」を確認することが第一歩です。
来年度の予算を固める前に、省エネ効果と投資回収を確認する
設備仕様と見積がすべて固まってから補助金を検討すると、設備構成や申請方法の選択肢が限られてしまう可能性があります。
更新設備がすでに決まっている企業、まだ複数の候補を比較している企業も、社内予算を固める前に、次の点を確認しておきましょう。
- 更新候補設備による省エネ効果
- 年間エネルギーコストの削減見込み
- 設備単体と複数設備のどちらで検討するか
- 設備単位型と工場・事業場型のどちらが計画に合うか
- 増産や製品変更を省エネ計算にどう反映するか
- 補助金を活用した場合の実質的な投資負担
- 補助金を使用しない場合と使用する場合の投資回収
- 予算決定から発注、工事、導入までのスケジュール
省エネ効果と投資額を併せて確認することにより、補助金申請だけでなく、設備投資そのものの判断材料として活用できます。
来年度の設備更新が「まだ検討段階」でも、ご相談いただけます
設備更新のご相談は早いほど、そのメリットを発揮しやすくなります。
ESJでは、工場設備の更新を検討している企業様に対し、更新前後の省エネ効果の確認から、設備更新計画に合った申請タイプの検討、補助金申請支援、設備更新後の報告作業まで対応しています。
例えば、このような段階でもご相談いただけます
- 来年度に設備を更新したい
- 社内の設備投資予算を検討している
- 更新設備は決まっているが、補助対象になるか分からない
- 特注設備や生産ラインを更新したい
- 主設備と周辺設備を同時に更新したい
- 増産予定があり、省エネ効果の示し方が分からない
- 設備単位型と工場・事業場型のどちらで検討すべきか分からない
- 補助金を含めた投資回収の見通しを確認したい
ESJで確認・支援できること
- 既設設備と更新候補設備の比較
- 更新前後の省エネ効果の試算
- 主設備と周辺設備を含めた更新範囲の整理
- 計画に合った申請タイプの検討
- 生産量が変わる場合の計算条件の整理
- エネルギーコスト削減効果と投資回収の確認
- 補助金申請に必要な準備と申請支援
ご相談時点で、設備仕様や見積がすべて確定している必要はありません。
設備の更新時期、概算予算、既設設備の型式、現在検討している設備の資料など、分かる範囲の情報をご用意ください。
よくある質問
Q1.更新する設備がまだ決まっていなくても相談できますか?
はい。設備の候補を比較している段階でも、現在の設備、導入目的、更新時期、概算予算などをもとに、確認すべき項目を整理できます。
Q2.SIIの指定設備一覧にない設備は対象外ですか?
指定設備の対象範囲だけで判断できない場合があります。SIIの2026年版特設サイトでは、申請内容によって、指定設備のほか、先進設備・システム、オーダーメイド型設備などが対象になることが示されています。
Q3.増産予定でも省エネ補助金を検討できますか?
増産を伴う計画では、生産量、製品構成、稼働時間、エネルギー消費原単位などの整理が必要になることがあります。実際にどの評価方法を利用できるかは、申請タイプと最新の公募要領に基づいて確認します。
Q4.主設備とコンプレッサーや空調を一緒に更新できますか?
公表された交付決定案件には、レーザー加工機とコンプレッサー、印刷機と空調、射出成形機と照明などを組み合わせた計画があります。ただし、自社の設備を同じ計画に含められるかは、設備構成や要件を個別に確認する必要があります。
Q5.相談前に用意するものはありますか?
既設設備の型式や写真、更新候補設備のカタログ、概算見積、稼働時間、電気・燃料使用量、現在と更新後の生産量、導入希望時期、社内の予算決定時期など、用意できるものだけでも構いません。
参考資料
- SII:工場・事業場型 交付決定案件一覧
- SII:工場・事業場型 2次公募交付決定案件一覧
- SII:省エネ・非化石転換補助金の申請タイプについて
- MinDeCarbon:業種別に見る工場設備の更新・補助金活用例
※本記事は、令和7年度補正予算「省エネ・非化石転換補助金」の2026年版公表資料をもとに作成しています。次年度の制度、補助対象設備、補助率、省エネ要件、申請期間などは変更される場合があります。申請を検討する際は、最新の公募要領をご確認ください。
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