
中小企業がカーボンフットプリントを考える際に押さえるべきポイントと注意点
- CO2を算定したい
- 先進的な技術、製品、制度情報を知りたい
- 脱炭素の情報が知りたい
- その他
2025/10/03
【目次】
はじめに
近年、中小企業においても「カーボンニュートラル」への取り組みは避けて通れなくなっています。
これまでのSBT認定取得や温室効果ガス削減目標の設定だけではなく、カーボンフットプリント(CFP)やライフサイクルアセスメント(LCA)への対応も求められるようになり、その流れの速さに混乱している担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、中小企業がCFP算定に取り組む際に押さえるべき基本的なポイントと、特に注意するべき点を、具体例を交えながらわかりやすく解説します。
1. カーボンフットプリント(CFP)とは?
CFPとは、製品やサービスのライフサイクル全体における温室効果ガス排出量を「見える化」する取り組みです。よく使われる表現として「ゆりかごから墓場まで」がありますが、まさに原材料の調達から製造、流通、使用、廃棄に至るまでの排出量を合計し、「1製品あたりのCO₂排出量」として算出するものです。
※CFPについてはこちらの記事でも解説しています。
なぜ中小企業でも重要なのか
- 取引先からの要請 : 大手企業や海外取引先は、サプライチェーン全体での排出量開示を求める傾向が強まっています。
- 競争力の維持 : 同業他社との差別化や入札条件で有利になる場合があります。
- コスト削減の機会 : 算定過程でエネルギー使用量やロスが明確になり、削減対策に直結することがあります。
2. CFP算定で押さえるべき3つのポイント
1. 算定範囲(境界)を明確にする
CFPは本来「製品単位」でのGHG排出量(温室効果ガス排出量)を算定する仕組みです。そのため、まずは「どの製品を対象とするのか」を明確にする必要があります。
ただし、実務では製品全体を一度にカバーするのが難しい場合もあります。その際は「主力製品に絞る」「代表的なラインの製品から始める」など、対象範囲を段階的に決めていくのが現実的です。
※事業所全体の排出量を整理したい場合は、CFPではなく「事業所単位のGHG排出量算定(組織単位のインベントリ)」を実施することになります。両者を混同しないことが重要です。
2. データ収集を効率化する
エネルギー使用量や原材料の使用量など、一次データが重要です。
例えば、電力の使用量を「工場全体」ではなく「工程別」に把握できれば、精度は大きく向上します。
そのためには、エネルギー診断を受診し、工程ごとの使用状況を分析する方法 や、見える化システム(計測機器やIoTセンサー)を導入してデータを自動収集する方法 が有効です。
これらは、担当者の負担を減らすだけでなく、信頼性の高い算定を可能にします。
3. 共通ルールに基づく算定
CFP算定には国際的なガイドライン(例:ISO 14067)や国内のルール(環境省LCAデータベースなど)を活用することが基本です。
独自の基準で算定すると、第三者に認められにくい点に注意が必要です。
3. 注意すべき3つの落とし穴
1. 「CO₂削減=CFP改善」とは限らない
電力使用量の削減や設備更新によるCO2排出量の削減は重要ですが、CFP算定では原材料や物流など他の要素が大きく影響する場合もあることに注意が必要です。
2. データの過不足
細かすぎるデータ収集は担当者の負担が増加します。一方、大雑把すぎると信頼性が下がります。バランスを意識した基準の設定が望ましいでしょう。
3. 部門間の連携不足
製造、調達、物流、管理部門など複数の部署が関与するため、情報共有を怠ると抜け漏れが発生する可能性があります。
4. エネルギー診断データをCFP算定に活用する方法
1. 工程別の排出源を特定できる
CFP算定では、電力や燃料使用量を「製品1単位あたり」に割り付ける必要があります。
エネルギー診断によって 工程別・設備別のエネルギー使用量 が明確になると、製品のどの工程が排出量の多くを占めているのかが分かります。
⇒これにより「主力工程に対策を集中させる」など、効率的な改善計画が立てられます。
2. 実測データに基づく精度の高い算定が可能になる
多くの企業では、最初は「電力請求書などの全体データ」を用いてCFPを算定します。しかし、それだけでは工程ごとの精度が粗く、算定結果に不確実性が残ります。
⇒エネルギー診断で得られる 計測データや稼働状況のデータ を使えば、推計に頼らず実測ベースでCFPを算定でき、信頼性が高まります。
3. 削減シナリオの裏付けに使える
例えば、エネルギー診断で「圧縮空気設備の更新で消費電力20%削減可能」という結果が得られた場合、それをCFP算定に反映させると、製品あたりのCO₂排出量をどれだけ下げられるか を定量的に示すことができます。
⇒「この改善策を実行すればCFPが〇%削減できる」という 投資判断材料 になります。
4. 補助金申請や取引先説明に活用できる
エネルギー診断の結果とCFP算定を組み合わせると、
- 補助金を活用して更新するとCFP削減につながる
- 取引先への排出削減説明に具体的数値を示せる など
⇒対外的な信頼性の高いエビデンス としても活用できます。
まとめと次のアクション
エネルギー診断は、経産省「IT診断」や環境省「SHIFT事業」の活用で診断費用を低く抑えながら受診が可能です。
CFP算定にエネルギー診断で得た「工程別」「設備別」のエネルギー使用量データを活用すれば、
- 算定の制度向上
- 改善ポイントの明確化
- 削減効果の見える化
- 補助金活用・取引先対応での根拠資料として提示
が可能です。
CFPは単なる算定で終わらせず、次につながる行動が大切です。
自社だけで難しいと感じたら、エネルギー診断のような外部支援を取り入れるのも一つの選択肢です。
まずは気軽に情報を集めることから始めてみませんか。
🔍 ESJのエネルギー診断「脱炭素診断」
資料のご請求はこちらから
CATEGORYカテゴリー
-
業種でさがす
-
設備でさがす
-
お悩みでさがす
-
導入事例でさがす