認定支援機関が解説!環境省「SHIFT事業」とは?
- SHIFT事業
- 脱炭素って何からはじめるの?
- コストを削減したい
- 補助金を活用したい
- 先進的な技術、製品、制度情報を知りたい
- CO2の見える化をしたい
- デマンド・見える化
2025/12/27
~中小企業が「光熱費削減」と「CO₂排出削減」を進めるための支援制度をやさしく解説~
はじめに
環境省SHIFT事業は、令和3年度(2021年)から実施している事業で、主に中小企業等でCO₂削減に取り組む事業者を対象に、エネルギー診断、運用改善提案、脱炭素化に向けた実施計画の策定、および設備更新までを支援しています。
しかし、
- 「制度の仕組みがよく分からない」
- 「どのように活用すればいいのか分からない」
- 「申請が煩雑で手間がかかる」
といった声が多いのも事実です。
実際にSHIFT事業を活用し、そのメリットを理解した事業者の中には、
次年度以降に複数の事業所に展開し、全社的にCO₂排出量とエネルギー使用量の同時削減を進めている企業や、
SHIFT事業で策定した計画を基に設備更新を実施している企業もいます。
本記事では、環境省SHIFT事業(DX型CO₂削減対策実行支援事業)について、初めての方にも分かりやすく解説します。
1|制度の概要|SHIFT事業とは?
SHIFT事業(脱炭素技術等による工場・事業場の省CO₂化加速事業)は、主に中小企業等を対象に、以下の2つの事業が整備されています。
目的に応じて選択することができます。
DX型CO₂削減対策実行支援事業
「計測 → 分析 → 計画 → 実行」というステップを制度として支援するため、「診断だけで終わる」のではなく「計画策定」までを支える仕組みとなっているのが特長です。
- DXシステム(見える化システム等のデジタル技術)を導入(購入またはレンタル等)し、計測データの分析結果による現状把握と課題抽出を行い、運用改善を実施。
- 専門の支援機関による即効性のある省CO₂化と、計測データに基づく効果確認(対策と改善)を実施。※最長2カ年
- DXシステムによる計測データに基づいたCO₂削減・エネルギー使用量削減の複数対策について実施計画を策定。
省CO₂型システムへの改修支援事業
CO₂排出量を大幅に削減する電化・燃料転換・熱回収等の取組※により、以下のいすれかのCO2排出量を削減する設備導入等を支援(3カ年以内)。
※蒸気システム・空調システム・給湯システム・工業炉・CGSに関する単純な高効率化は補助対象外
- 工場・事業場単位:15%以上
- 主要なシステム系統:30%以上
2|なぜSHIFT事業なのか?
SHIFT事業が「中小企業」を対象としている理由
脱炭素や省エネ対応は企業規模を問わず求められていますが、特に中小企業では、
専門人材が不足している
エネルギー管理が属人化になりやすい
投資判断に使えるデータが不足している
といった課題を抱えているケースが多いのです。
SHIFT事業は、こうした中小企業特有の課題を前提に設計された制度です。
大規模な投資を前提とするのではなく、
「まずは現状を正しく把握し、無理のない形で改善を進めること」を重視しています。
設備更新や補助金活用だけでは、判断が難しい場面もある
中小企業にとって設備更新は失敗のできない投資判断です。だからこそ、いつ・どこに・どのような投資を行うべきかを定量的に確認する必要があるのです。
- 本当に効果が大きい設備がわからない
- 更新後に削減できる数値が把握できない
- 次の投資判断に繋がらない
このような状況で、根拠となるデータを持たないまま設備更新を進めることはリスクでしかありません。
SHIFT事業は「診断で終わらせない」ための制度
SHIFT事業(特にDX型)は、
計測→分析→計画
という流れを、制度として一体的に支援する仕組みです。
一般的なエネルギー診断と異なるのは、
- 計測データで現状を把握し、
- 削減余地を数値で整理し、
- 即効性と実行可能な対策を計画に落とし込む
という実行までを見据えた支援を前提としています。
そのため「診断結果は出たものの、次は何をどうすればいいのか分からない」といった状態になりにくい点が、SHIFT事業とその他の診断事業との違いです。
将来の設備更新・投資判断につながる
SHIFT事業で得られる計測データや分析結果は、その年度だけで終わるものではありません。
- どの設備が、どの時間帯にエネルギーを多く使っているか
- 運用改善でどれぐらい削減できるか
- 設備更新を行った場合、どの程度の効果が見込めるか
これらの情報は、将来の設備更新や補助金活用の判断材料として活用できます。
そのためSHIFT事業は、今すぐ設備更新をする予定はないが数年後のその時を見据えて準備したい、という企業にとっても有効なのです。
SHIFT事業における支援機関の役割とは?
SHIFT事業を効果的に活用するためには、制度の理解だけでなく実務面での支援が重要です。
- 計測ポイントの設計・確認
- データの整理・分析
- 現場で即効性のある実行可能な対策への落とし込み
SHIFT事業では、環境省に登録・認定された支援機関がこれらを担う仕組みとなっています。
エネルギーソリューションジャパン(以下、ESJ)は、SHIFT事業の支援機関の中でいち早くDX型支援に取り組み、多くの支援実績を有しています。
SHIFT事業のCO2削減事例としてESJの支援事例が取り上げられています。
ESJは単にSHIFT事業の案内や診断を行うだけではなく、
- どこからどのように始めることが最短・最適か
- どこまで削減を目指せそうか
- 設備更新の優先順位
- 設備更新に最適な補助事業の選定 など
事業者の現状やステージに合った提案や支援を心がけています。
3|SHIFT事業を活用するメリット
SHIFT事業を活用することには、次のようなメリットがあります。
① 光熱費のムダを可視化できる
データ計測により、
- どの時間帯にエネルギーを多く使っているか?
- どの設備がムダに稼働しているか?
といった実態が見える化されます。
経営・設備管理の根拠がデータで整理できるため、改善ポイントが明確になります。
② 設備更新や投資の優先順位が見える
ただ単に古い設備を交換するのではなく、
「どこを改善すれば一番効果が出るか」
という判断が可能になり、投資効果の計算やROI評価に役立ちます。
③ データに基づく改善計画が立てられる
感覚ではなくデータに基づく計画により、
- 現場スタッフの納得感が高まる
- 将来の省エネ投資に説得力が出る
といった効果も得られます。
④ 補助金でリスクを抑えられる
補助金で自己負担を抑えつつ、現状の課題整理と対策実行は中小企業の負担を大きく抑える制度設計です。
4|SHIFT事業の仕組み(DX型のポイント)
SHIFT事業は2つの類型からなることがお分かりいただけたと思います。
ここからは、主に中小企業向けにDX型CO₂削減対策実行支援事業(以下、DX型)についてより詳しく解説します。
DX型はこんな企業におすすめ
- 何から始めればいいか分からないが、脱炭素化に向けて動き出したい
- 現状を把握し、まずは運用改善から始めたい
- 数年後の設備更新に備え、計画を立てておきたい
基本的な流れは次の通りです。
STEP ① エネルギー診断の実施(データ収集)
まずは、工場・事業場のエネルギー使用状況の計測、情報収集により、現状を把握します。
- 電力使用量
- 燃料使用量(ガス、重油、LPGなど)
- 設備ごとの運転状況
- CO₂排出量
などを、詳細なデータとして収集します。
※ 既存の見える化システムがある場合は、これを活かしてもOKです。
STEP ② データ分析(削減余地の把握)
収集したデータをもとに、
- エネルギー使用のムダな部分はどこか?
- どの時間帯・設備で無駄が多いか?
- 運用改善でどれだけ削減できそうか?
といった点について分析・評価し、実現可能性の高い対策を選定・提案します。
この対策内容は、診断結果報告書にまとめ、報告会で事業者様に報告し、実施について意見交換します。
STEP ③ 実施計画の策定と実行
報告会で実施した意見交換に基づき、実施計画を策定します。
- 運用改善(設定変更、作業手順の見直しなど)
- 省エネ制御の改善
- 計測、制御の変更
などの設備導入以外の対策案を複数(3つ以上)検討し、DX型CO2削減対策については、事業期間内に少なくとも1つ以上の対策を実施し、その効果を確認し実施計画書に明確に含めます。
5|申請できる事業者、対象となる支援事業の要件
この制度の対象となる申請者の要件は、次のような企業・事業場です。
✅ 中小企業(法人)であること
中小企業の定義は、中小企業基本法に基づき以下の通り、「資本金」または「常時使用する従業員数」のいずれかを満たすことと定められています。

この他に、直近2期の決算において連続の債務超過(貸借対照表の「純資産」が2期連続でマイナス)がないことなど、申請にあたって要件があります。
※ 個人事業主は対象外です。
※ 資本金・従業員数のいずれかを満たす場合に対象となります。
✅ 対象となる支援事業の要件
以下の条件を満たす工場・事業場が対象です。
- 1事業者(法人)当たり最大5つの工場・事業場までとし、下記を満たすこと
- 年間CO₂排出量が50トン以上〜3,000トン未満の日本国内の工場・事業場
- DXシステムを導入し計測すること(既存のDXシステムも活用可)
- DX型支援に対応可能として登録された支援機関の支援を受けること
自社が申請要件を満たしているか不安な場合は、エネルギーソリューションジャパンまでお問い合わせください。
6|事業の流れ
SHIFT事業は、一般的に次のような流れで進みます。
📌 1|公募(申請受付)
公募期間内に申請書・計画書・見積書・会社概要・決算書類等を提出します。
📌 2|交付決定
・採択~交付決定
提出された計画の内容が審査され、交付決定の可否が通知されます。※先着順ではありません。
📌 3|DX支援事業実施
計測・分析・対策の実行・検証を進め、報告会を実施します。
📌 4|完了実績報告・補助金を受給
・事業完了後30日以内に完了実績報告書を提出
成果物(報告書類)や計測データをまとめて提出後、書類に不備等がないかの確認を経て、補助金が交付されます。
📌 5|事業報告
補助事業完了日の属する年度の終了後、3年間にわたり、年度ごとに年度終了後30日以内に、過去1年間のCO₂排出量の実績等の報告が必要です。
7|よくある疑問(FAQ)
Q|設備を更新しないと申請できない?
A|いいえ。DX型は設備更新前の計測・分析・改善計画の策定支援が対象なので、設備更新そのものは必須ではありません。
Q|他の補助金と併用できますか?
A|基本的には可能ですが、制度ごとに目的や対象費目のルールが異なります。併用時は対象費用が重複しないよう注意が必要です。
Q|計測はどのくらいの期間必要ですか?
A|制度としては、複数シーズン・運転状況を把握するため、最低数週間〜数か月の計測が推奨されます。
事業期間内に成果を出すために、計測設計を早めに開始することが重要です。
8|まとめ
SHIFT事業は、中小製造業が光熱費削減とCO₂削減を両立させるために有効な支援制度です。
制度のポイントは、
- データで使って現状を把握すること
- 分析・計画→実行→検証までを一気通貫で進められること
- 補助金で負担を大幅に抑えられること
です。
制度の仕組みを理解して計画的に活用することで、経営判断の精度が高まり、長期的な省エネ/脱炭素投資へとつなげることができます。
まずはSHIFT事業の支援機関であり、SHIFT事業の支援実績豊富な当社にご相談ください。
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